電通が社員に違法な長時間の残業をさせたとしてことし9月に労働基準監督署から是正勧告を受けていたとのニュースがありました。高橋まつりさんが過労のため自殺し、長時間労働の是正に取り組むとしていたのでこのニュースは電通の評判をさらに落としたと思います。このような違反を繰り返す労働環境の電通はサスティナブルな社会に貢献する企業として評価されるのであろうか疑問である。
電通のCSRは充実しているようにみえる。労働環境の整備に関して能力開発、ワーク・ライフ・バランス、健康・安全管理体制の整備の観点からきめ細かい対応を心掛けていると説明している。また、労働環境改革に関して企業情報のセクションに記載されている。そこには法令順守の徹底、過重労働の撲滅、労働環境の改善の3つの目標を掲げている。これまでの労働環境改革の取り組みの具体例がいくつか記載されており、またいくつかのデータポイントを開示して労働環境が徐々に改善されていることを定性的、定量的に説明している。しかし、今回の是正勧告でこれまでの取り組みがあまり効果が無かったことが明らかになってしまった。また、目標に掲げている法令順守の徹底が行われてないことも周知されてしまった。
広告代理店だけに定性的な説明はいい感じにプレゼンされているのかと思う。しかし、定量的な部分として開示されているデータポイントは説明力が不足している気がする。郎党時間が年々減少してきていることを年度別の総労働時間を棒グラフを使って説明している。また、一人当たりの法定外労働時間の月間平均も記載している。この一人当たりの法定外労働時間の月間平均では法定外労働の実態が見えないと思う。平均を出すより、例えば労働協定違反になる時間外労働をした従業員が何名、その労働時間、といった感じに具体的な違反件数を開示した方が是正勧告リスクが明確になると思う。また、一人あたりの有給休暇取得率に関しては電通の数値だけでなく同業他社との比較を加えた方が電通の労働環境改善の進捗がわかりやすくなり、他社より労働環境が整備に努力していることがわかると思う。ただ、他社との比較は業界内で足並みを揃え、同じ手法でデータを集める必要があるので簡単ではないかもしれない。
今後ESG・SDGへの取り組みが企業評価で重要になってくることを考えると広告業界で協力して比較可能なデータポイントを開示する枠組みを作ることが広告業界にも求められるのではないでしょうか?
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